ホーム  >  賃貸管理編  >  得だねッ情報12月号

得だねッ情報12月号
カテゴリ:賃貸管理編  / 投稿日付:2020/11/19 17:17

【得だねツ情報12月号】


『賃貸業界のニュースから』
「アパートの外廊下の崩落事故~貸主のリスクを考える~
賃貸住宅のオーナーにとっては他人事ではないかもしれません。北海道苫小牧市の賃貸アパートで外廊下の床が崩落し、家族5人が転落し病院に搬送される事故がありました。NHKなどによると事故が起きたのは今年10月17日の夕方で、2階建てアパートの2階部分が現場となりました。搬送された5人の命に別状がなかったのは不幸中の幸いでした。

報道では事故が起きた外廊下は金属製で老朽化が進んでいたことから、今年8月にオーナーに修繕するよう連絡していたと物件の管理会社が証言しています。オーナーは今後、怪我をした入居者への補償問題がでてくると考えられます。このように建物の不備によって入居者が怪我をした場合には、その建物の所有者が損害賠償責任を負います。今回の事例では入居者の使用方法に問題があったとは考えにくい上に、管理会社は廊下の改修を促していたと報道されており、事実ならば貸主の責任は免れないのではないでしょうか。

建物倒壊で1億5千万円の支払い判決

賃貸経営でおきるのは、このような老朽化による事故だけではありません。大規模災害時にも賃貸住宅オーナーの責任が追及された事例があります。1995年に発生した阪神大震災で、地震によって倒壊した賃貸住宅のオーナーが、亡くなった入居者の遺族らから責任を問われました。神戸市東灘区にあった「東神マンション」は、1階部分が完全に押しつぶされて倒壊し、一人暮らしの学生など4名が犠牲となりました。また、亡くなった学生の遺族らとともに、倒壊による生き埋めで大きな怪我を負った入居者も法廷でオーナーの責任を追及しました。神戸地裁の判決では、建物が当然持っているべき安全性を欠いており、「賃借人らの死傷は、地震という不可抗力によるものとはいえず、当該建物自体の設置の瑕疵と想定外の揺れの本件地震とが、競合してその原因となった」(判決文)と判断しました。裁判所は慰謝料のほかに、死亡による逸失利益、葬儀費用の合計金額の半分にあたる1億5千万円の支払いを、オーナーと建築業者に命じました。

巨大災害では、多くのことが「想定外」として責任が曖昧になりがちです。その中で、

貸主の責任を問いたこの判決は当時の不動産業界紙などでも大きく取り上げられたためご記憶の方も多いかもしれません。判決では、建物が老朽化しているだけでなく、建築状態が悪く設計・施工ともにいい加減な状態であったと認定しています。また、周辺で倒壊した建物はこのマンションだけだったことや、高い建築知識を持つ遺族が震災後すぐに現地で写真撮影や周辺への聞き込み調査などを実行しており、豊富な証拠が残されていたことがこの判決につながったと言われています。

意外と多い 滑る、転ぶ、落ちる 事故

集合住宅に関わる事故は多く発生しています。なかでも多いのは「滑る、転ぶ、落ちる」といった事故です。人口動態統計(厚生労働省)によるとマンションを含む建物内やその周辺で、滑る、転ぶ、落ちることが原因で亡くなった方は年間3614人(2017年)にも及びます。住宅火災による死者が889人(総務省 同年)といいますから、比べれば日常的な事故がいかに多いかわかります。共有廊下が水浸しで滑った、階段の滑り止めが壊れていて躓いた、子どもが手すりをくぐって落下したなど、例を挙げればキリがありません。


全な建物を提供するのは貸主の義務ですが、あまりに多い事故に対処するために「施設賠償保険」をすすめる声があります。施設賠償保険は建物等の施設の管理の不備や、構造上の欠陥が原因で怪我や死亡事故が起きた際に、貸主が負う法的責任によって生じる損害を補償する保険です。火災保険のなかには施設賠償特約が付帯できるものもあるようです。ひとたび事故が起きれば、補償はとても高額になることもあります。こうした保険も含めて対策を考えていきたいところです。


今年の3月4月の時点では新型コロナの影響で来春の繁忙期が心配されました。幸いにも客足に壊滅的な影響はなく、その数も戻りつつあるように思えます。すでにこの紙面でお伝えした通り、コロナ禍のお客様には変化が見られます。ひとつは、「リモートワークに適してるか」「ネット環境が安定してるか」「勤務先の距離が最優先ではない」などの条件面の変化です。もうひとつは、「ネットで徹底的に物件を絞る」という探し方の変化です。


しかし、そうは言っても物件を見ないで決めるお客様はかなりの少数派です。ネットの表現力が豊かになっても写真や動画では確認しきれませんし、オンライン内見では決めきれないポイントがあるからです。そこで今回は、内見時にお客様が気に掛ける「ネットでは分からないポイント」について考えます。



お客様が最初に目にするのは外観とエントランスです。これが物件の第一印象になります。エントランスが暗いとか郵便ゴミが散乱しているのはイメージダウンです。さらに駐輪場が雑然としている状態や、ゴミ置き場に残置物があるのも敬遠されます。このような共有部のイメージをお客様はかなり気にします。定期的な清掃が必要な所以(ゆえん)です。つぎにお部屋に入ると収納や設備をチェックしますが、これらはネットで得た情報の再確認に過ぎません。実はネットでは分からない気になるポイントとして「匂い」と「明るさ」があります。空室の期間も排水・下水の匂いが室内に上らないように、定期的な空気の入れ換えが必要です。「明るさ」については、陽当たりの良い物件ばかりでなく昼間でも暗い部屋もあります。これは少し明るめの照明器具を設置しておくことでカバーできます。以上は貸主側が意識しておくことで成約率を高めることができるポイントです。

つぎは貸主側では直接的には関与できないポイントです。しかしマイナス点を少しでも引き上げる策がない訳ではありません。1つめは、実際に現地に行くまでの駅からの「道のり」です。お客様はネットで所要時間は知っていますが、さらに知りたいのは物件までの道程です。たとえば商店の並び、人通り、道幅、街灯、景色などです。女性の一人暮らしや家族に女性のいる世帯なら、狭くて暗く人通りの少ない道のりは不安に感じるでしょう。これは外部要因ですから貸主側で変えることは出来ませんが違うルートを勧めることはできます。もし住人で知っている安全なルートがあるなら、たとえ数分の遠回りであっても提案しておくことで、マイナス点をカバーできます。2つめに気にするのは「隣人」です。お客様は表札や傘などを見るしか判断材料はありませんが、内見中にチラッと隣の部屋の入居状況を確認したりします。貸主側としては隣人の詳細情報を明かすことはできませんが、安心材料があるなら積極的に伝えてもよいと思います。3つめとして、さりげなく気にするのが「携帯電波」です。電波の弱い貸室は4G電波を改善してくれる「携帯ブースター」のような機器が売られています。

貸主側では改善は出来ないがお客様は気にしているというポイントがあります。まずは「窓からの眺め」。内見中に窓を開けてみたら、目の前のマンションや一戸建ての住人の姿が見える、という条件もあるでしょう。さらに窓を開けた際に聞こえてくる車の音が気になる場合もあるでしょう。お客様の中には居室内の壁の厚さを気にする方もいて、叩いて壁の厚さを確認したりします。水道やシャワーの水圧などもチェックします。これらで減点になるなら、それが弱点ということになるかもしれませんが、そもそも弱点のない物件はありません。大事なのは、弱点を埋めても余りある長所をアピールすることです。


新型コロナによってお客様はネットで物件を絞り込むようになりましたが、たとえ選ばれたとしても「現地確認」が待っています。その際のお客様の「気になるポイント」を知った上で、なるべく良い評価が得られるように準備したいと思います。

:私のアパートで一人暮らしの60代男性が亡くなりました。いわゆる孤独死です。5日後に家族が発見してすぐに解約となったのですが、不動産会社から「次の借主が気にするので家賃も下げなければならない」と言われました。皆さんはどう思いますか?

:貸室を事故物件として扱う、ということですかね?「孤独死=事故物件」という考え方ですよね。これが一般的な判断なのでしょうか。

:あるいは心理的瑕疵物件とも言ったりしますね。「入居者が嫌悪するような事実が過去におこった物件」という意味のようです。

:つまり次の借主に告知するということですね。

:でも孤独死のあった貸室はすべて事故物件や心理的瑕疵物件になるのですか?

:納得いかないですよね。「入居者が嫌悪する」というのは、たとえば自殺なら理解できます。自殺は相続する遺族や連帯保証人に賠償責任を認めた判例がありますから事故物件といえると思います。次に住む人の嫌悪感も理解できるので心理的瑕疵物件ともいえると思います。殺人事件でも同じですよね。でも孤独死を事故と考えるのは納得できませんね。

:法律的な定義はどうなっているのですか?

:明確な定義はないようです。

:確かに、前の入居者が一人で亡くなった部屋を嫌う人は多いでしょうね。

:でも事故物件の判定は大家に深刻な影響を与えるのに定義が曖昧すぎますね。Aさんが告知しないで賃借するとどうなりますか?

:借主が入居後に事実を知ったときに「知ってたら借りなかった」とクレームを言ってくる。最悪は「損害賠償しろ」と裁判になる。


:面倒ですね。ハッキリした指針はないの?

:今年の春に「全宅連」という不動産業者の団体が「住宅確保要配慮者等の居住支援に関する調査研究報告書」を発表しました。そこで孤独死と事故物件の考え方を整理しています。

その内容を要約すると

:うん、だいぶ明確になりましたね。

:「告知の必要ない」というのは力強いですね。

:②はなぜ告知が必要とされたのでしょう?

:借主が入居後に近隣から孤独死の事実を知る可能性が高いからです。その可能性も心理的瑕疵の判定のひとつになるみたいです。

:確かに、借主が知る由もなければ心理的瑕疵もない訳ですね。

:この報告書では、「住宅内で人が亡くなるのはあり得るし、病気や老衰による死を責めることはできないから当然に孤独死は事故ではない」としています。

:明確で理屈が通ってる。

:法的な根拠がある訳ではないのですよね?

:そうですね。しかし後日、借主側と意見の相違がおきたときに貸主側の見解の背景として強力な拠り所にはなると思います。万一訴訟となったときの裁判所の判断にも影響を与える可能性もありますよね。

:ではAさんは告知しないで通常の家賃で募集しますか?5日で親族が発見しているし近隣でも話題になっていないでしょうから。

:そうですね。この事実を不動産会社と相談して最後は自分で決断します。皆さんの考えと教えていただいた調査研究報告書の内容はたいへんに参考になりました。

ページトップへ